パノラマ寓話

恣意セシル 文藝活動報告サイト

愛の報い

   

乱暴に組み敷いた 君の
押さえつけた手首が細すぎて
多分 あの時に僕は壊れたんだろう

弱弱しい蛍光灯の明かりが
乱雑に畳の目を塗り潰す
細かなところは見えない
大まかな君の 形しか

まぐわう とはどういうことか
考えてみたことはあるか
真っ暗な穴の底へ落ちていくように
誰かを抱いて 泣いたこと

背徳のため その背に爪を強く立てた
空に月がある限り消えない傷になれと念じながら

奪うとはどういうことか
考えてみたことはあるか
与え続ける理想の果てに
すべての希望ごと自害した男のこと

強欲のため その舌を強く噛んだ
君が女である限り行う口づけの度に思い出すように

どこまで乱雑に扱っても
君の瞳は死ななかった
鋼の様にしなやかな強度で
君は僕と共にいた

その芯となる骨は簡単に握り潰せるような細さで
あっという間に壊れてしまったのに

 - poem