パノラマ寓話

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終末のパレード

   

まだ無邪気に明日を信じていた昼下がり
どこからか 死人の唄が聴こえてきたよ
黒いヴェールがそよぐ気配
知らない言葉で 平和を呪う唄が伝ってきたよ

テレビの中の戦火は触れても熱くなくて
写真の銃は誰を傷つけることもできない
ラジオが報せるニュースの中 響く悲鳴は丁寧に消されて

私達は何処へ向かうんだろう
どれだけの国と人を滅ぼせば
奪うことを必要としない種に進化できるんだろう

目覚めたら世界が変わっていたなんて
小説の中の出来事か 悪いジョークだと思っていた

アスファルトの道をどこまでも
白い鳩の死骸が埋め尽くしている
見開かれた目は血を流し
まるで人工のアルビノ
夢のように綺麗な 不吉な景色が
生々しく手触りのある現実として広がっている
彼らは土に還ることもできず腐り果て
憎悪を育む苗床となる

昨日まで笑っていた声が罵声になった
ついこの前まで幸せと繋がれていた手が
凶器を手に手 取り合って
不協和音を奏でているよ
粟立つ肌の下 心臓が早鐘を打ち続けている

私達はもう何処へも向かえないんだ
どれだけの国と人を踏み台にしても
これ以上 新しい未来が臨めないのなら

引きちぎられた祈りの行方もいたわらず
鳩の骸を踏みしだき行こう
これは終末のパレード
世界の果てを創るための旅

まだ空だけがあの日のまま青く澄み渡っているけれど
あれももうすぐ赤く焼け焦げる
血で血を洗って
悲しみを怒りで塗り潰し
涙を燃料に悪意が燃える

そうして出来上がった誰も知らない「世界地図」を
ねえ 誰が手にするだろう
ほら もうここには誰もいないのに

 - poem