パノラマ寓話

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ユゥテロ

   

締め切ったカーテン越しに朝陽が注ぐ部屋は
どうしようもなく陰惨で不吉だ
あたしはちかちかと煩い蛍光灯のリズムに合わせ
おもむろに刃を皮膚に滑らせる

そうして生まれた熱だけが私を守る
そうして呼ばれた病こそが私の味方となる

ぱたぱたと滴る音がエコーして聴こえるほど
ここの静寂は重くて深い
眩暈がするような強い血の匂いが
窓の向こうに広がる普遍を遠ざける

この瞳を閉じる最後の瞬間まで
イノセントであるために
悪意の対角線上を死守するために
これは祈りの代わり
賛美歌の色をした 理の模倣

目を上げれば 枯れて腐り始めたカサブランカ
スカートの下に潜ませた毒が
私に向けられた善意を惨殺した
翳り始めた部屋はまるで子宮
乾き始めた傷口を抉りながら
堕胎した悪夢の数を数えている

欲しいものはたったひとつ
愛ではなく
自由でなく
情熱でなく
憎悪でもない
自己完結という永久機関が紡ぐ
不変の自我
私が私以外の何者でもないという確証

 - poem