パノラマ寓話

恣意セシル 文藝活動報告サイト

ホワイトホール

      2017/04/12

光が白く灼くアスファルトの上
スカートをたくしあげた君が笑っている
何かを呟いてる でも声は届かなくて
ただどうしようもなく確信的に
「殺してくれ」 と 唇が動いて見えた

それは遠い 春の日の思い出
指の下 強く脈打つ頚動脈に怯えた真昼

呼吸にすら傷つけられてしまう脆い君を
一体どうやって繋ぎ留めたらいいだろう
「世界の果てへ行きたい」と云う君の
真摯な あまりに真摯な眼差し

どんな絶望にも怯まず動くこの心臓にしがみつき
ただ無心に生きることを疑わぬ僕を
臆病者だと君は嘲笑うのかな

液体のように流動し続ける世界
輪廻に閉じ込められた季節が周る
逆光が埋め尽くす晴れた空
花びらの雨だれがぽつぽつと滴るから
喘ぐことそのものが目的のようになった君を
今こそ連れ去ってしまおうか

それは遠い 春の日を境としたパラレル
指の下 儚く耐えた君の絶望を食んだ真昼

たとえここが痛みだけ駆け抜けてゆく荒地だとしても
行く先は世界の果てではなく
もっと眩しい 光の中心

その為だけに僕はその影を踏み続ける

 - poem