パノラマ寓話

恣意セシル 文藝活動報告サイト

赤い花

   

落ちて。
落ちていくのだ。
無常の速度で。
眩暈よりも早く、眩むように。

空はくすんだオレンヂ、
冷めた紅茶は植木にやろう。
怠惰な夕暮れと虚ろな朝焼け。
両者に違いはない。

いつも食い違っていたな。
君は赤い花が好きで、
僕は赤い花が嫌い。
いつも赤い花を咲かせたいと言っていたけれど、
その庭は薄暗く荒れ果てていた。

ねえ、僕たちは嵐の中を泳いでいたんだろうか。
世界の果てのようなイロゴト。
刹那的なクチヅケ。
絡まる肉に感情はない。

目も眩む速度で悲劇へひた走る僕たち。
君は唇から赤い血を流し、
僕の目は光を失う。
どこへも行かなければ良いの。
君はつぶやく。
そう、僕たちが僕たちを完全に閉じる事が出来れば
僕たちは幸せだったかな。

落ちて。
落ちていくのだ。
悲劇的な速度で、
絶望よりも陳腐な場所へ。

ああ、こんなときだ。
僕は目を閉じる。
こんなときこそ赤い花が咲けばいい。
悪趣味な赤い色で、満たしてくれればいい。

 - poem