パノラマ寓話

恣意セシル 文藝活動報告サイト

エステファンの弔い

   

午後三時 丘の上
空には少しの雲 明日は晴れるだろう
鐘がひどく響いている
エステファンの不在を叫ぶように

丘への道 景色は色を失くし
鴉と馬と羊が並んで歩いている
赤い花と黒い大地と白い空
灰色はない 曖昧もない
つまりは君はもう いない

彼女はのろまだったな
名前に意味もなかった
僕が君を好きだと思ったのも
残酷な気まぐれでしかなかった

鐘が鳴っている
遠く近く 怯えるように
鴉と馬と羊はいつしかいなくなった
僕は祈る対象を失くし
君の瞳の色も忘れようとしている

さようなら、エステファン。
愛してたよ、エステファン。

僕が殺してしまったエステファン。
救いのない大地で 安らかに眠れ。

 - poem