パノラマ寓話

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少年人魚

   

報われない恋でワルツを踊る
夜を引き裂くため
しがない温もりに小さく身体を折りたたむ

塞がった傷を抉じ開けるのは
君の視線と声
同じ次元に存在する事実

泡沫の海に深く潜って
儚いと知っても君を愛した
若い誓いなんてあてにならないけど
自分たちは違うと
心のどこかで思っていた

禁断の松明は汚れた火で
純粋な思い込みを冒涜した
篝火が映した二つの影

君に触れた手を浸す海は
生温く昏く
涙なんて陳腐なものを連想させる

少年人魚は少年のまま
独り 海に留まり続ける
そして時折 僕の中に顔を出すから
その度 僕は
刺さったままにしてある棘を思い出す

 - poem